ベトナムで長期で働くときには、ワークパーミット(労働許可証)を取得する必要があります。
比較的簡単に取得できるビザは1回3ヶ月まで滞在可能ですが、年間を通して183日以上滞在する場合はベトナム所得税の課税対象となります。
また、ベトナムでの就労は他のマレーシアやタイ、フィリピンなどの東南アジア諸国と比べて条件が厳しいです。マレーシアはお金があればMM2Hという長期滞在ビザを取れますし、タイにもタイランドエリートというお金で解決できる長期滞在用ビザがあります。
しかし、ベトナムはあくまでもベトナム人の仕事確保が優先されるので、現地で働くためにはその外国人が一定以上のスキルや経験を持っていることが求められ、ベトナム人では代用できない場合にその外国人に対して就労許可証が発行されるという方針になっています。
他国のようにお金さえあれば長期滞在ビザが買えるというわけにはいきません。もちろん、ベトナム現地法人を設立して代表として働くという方法もあるかと思いますが、それはそれで労力はかかりますね。
ワークパーミットの取得については、その必要書類の準備はご自身で、ベトナムでの申請手続きなどはベトナムのスタッフやコンサル会社へ依頼することになるかと思います。
今回は、ワークパーミット取得までに必要な手続きを、自身で行う書類準備を中心としてまとめました。
前提
- 職種や業種によって、準備内容は変わります
- 今回はIT企業でエンジニアとして駐在する場合をご紹介します(日本に親会社、ベトナムに子会社)
- つまり、「専門家」としてワークパーミットを申請します(現地法人の代表などは別)
- 年々、法改正されるため、その都度段取りや必要書類を確認する必要があります
- 今回は2021年9月時点の情報です
- ハノイ市で取得(ホーチミンやダナンなど市が違うと条件や段取りが異なる場合があります)
- コロナ禍であれば、ベトナムで働くためにはワークパーミットの他に隔離用ホテルやPCR検査など必要ですが、ここでは割愛させていただきます
ベトナムでは頻繁に法改正があり条件が変わるため、ご自身の業種や職種で必要になる手続きを必ず事前に確認しましょう。
※あくまでも本記事の内容はITエンジニアの場合の一例です。
必要なもの
上記前提の元、ワークパーミットを取得するには以下の書類の準備が必要です。
- パスポート
- 外国人雇用の登録手続き(ここでの説明は割愛させていただきます)
- ワークパーミット申請書(ここでの説明は割愛させていただきます)
- 無犯罪証明書
- 健康診断書
- 大学卒業証明書(※2019年の新労働法より必要)
- 業務経歴証明書
- 任命書
期間のイメージ
各書類の準備には意外と時間がかかるものです。全体のイメージをまとめてみました。
それぞれの内容については各項目で詳細を説明します。
書類 | 申請〜受取 | 公証役場〜外務省の公証 | ベトナム大使館の認証 |
---|---|---|---|
無犯罪証明書 | 2〜3週間 | 数日 | 半日 |
健康診断書 | 1〜2週間 | 数日 | 半日 |
卒業証明書 | 1週間 | 数日 | 半日 |
実務経験証明書 | 数日 | 数日 | 半日 |
任命書 | 数日 | 数日 | 半日 |
書類 | 申請から受け取りまで | 公証 |
---|---|---|
無犯罪証明書 | 2〜3週間 | 不要 |
健康診断書 | 半日 | 不要 |
これに加えて、最後のワークパーミットの申請〜受け取りが1ヶ月〜1ヶ月半のため、トータルでは2ヶ月〜2ヶ月半かかります。
時間に余裕を持って準備を始めましょう。
段取り
書類準備
基本的に上記の必要書類は日本で準備ができます。
期間的に日本での準備が間に合わない場合は「健康診断書」と「無犯罪証明書」はベトナムで取得することができます。ベトナムへ3ヶ月ビザで入国した後に、病院で健康診断したり法務局で無犯罪証明書を準備する感じです。
この後説明しますが、日本で準備した書類は最終的に在日ベトナム大使館までの認証が必要で、ベトナムで準備した書類は公証は必要ありません。
各書類の内容や準備方法は次項目で説明していますのでご参考ください。
公証
準備する書類は公証する必要があります。
- 無犯罪証明書 →公文書
- 健康診断書 →私文書
- 大学卒業証明書 →私文書
- 業務経歴証明書 →私文書
- 任命書 →私文書
「公文書」と「私文書」では公証の段取りが異なります。
「公文書」はもともと公的機関(警察署など)が発行している書類なので公証の手間が省け、「外務省」での公証と「在日ベトナム大使館」での認証だけが必要になります。
「私文書」は大学や企業などの公的機関以外の機関が発行する書類のため、公文書よりも手間が多く、「公証役場」「法務局」での公証が増えます。
上記の図からわかるように、一部の地域(東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府)の公証役場であれば「ワンストップサービス」が利用できます。これはかなり便利で、法務局と外務省へ赴く手間が省けます。公証役場で、ポンッ、ポンッ、ポンッと三つのスタンプを1時間足らずで押してくれるのです。
公文書も私文書も外務省までの公証が終わったら、まとめて在日ベトナム大使館へ持って行き、認証をしてもらいます。ベトナム大使館での認証はいつも混み合っていて、待ち時間が数時間と長く、半日程かかるため、開館時間前には着いておくようにしておいた方が良いです。
▼在日ベトナム大使館
開館時間:(平日) 9時半~12時、14時~17時
住所 :東京都渋谷区元代々木町50-11
電話 :03-3466-3311
URL :https://vnembassy-jp.org/ja
▼外務省
開館時間:(平日)9時〜12時30分、13時30分〜17時
住所 :東京都千代田区霞が関2-2-1
電話 :03-3580-3311
URL :https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000607.html
ワークパーミットの申請と取得
上記で公証まで終わった書類を全部まとめてベトナムのワークパーミット発行機関に提出します。
申請から発行まではおよそ1ヶ月〜1ヶ月半をみておいた方が良さそうです。
大学卒業証明書
こちらは2019年の新労働法より、「専門家」の場合に必要となりました。
ワークパーミットを既に持っていても、それ以降に更新する場合は「新規申請」となり、大学の卒業証明書が求められます。(2021年2月15日以降)
しかも、ベトナムで行う業務内容と大学での学習内容が一致していることが必要です。
一致しているかどうかはハノイ市労働・傷病兵・社会問題局の判断になり、判断の詳細はそちらに委ねられます。
例えば、文系学部出身者はもちろん、機械系や化学系学部出身者はITエンジニア業務に就くことは難しそうです。少しでも内容が被っている部分があれば、そこを全面に推して説明して申請を試みるのもありです。
これはかなりハードルが高くなりましたよね。
多量の外国人がベトナムに働きに来てベトナム人の雇用機会を損なうことを懸念しての厳しい条件ではないかと思います。
無犯罪証明書
日本で取得する場合
地元の警察本部で取得できます。
東京都なら東京都警視庁本部、神奈川なら神奈川県警察本部です。
申請から1週間ほどで受け取りできます。費用は無料です。
申請時には手の指紋をとりますが、申請時間は混んでなければ10分程度です。
ただし、申請の際には「ワークパーミットの申請書(写し)」を警察署に提出する必要があるため、その申請書の準備期間(1週間程度)を加味しておいてください。
ベトナムで取得する場合
以下の書類を持って法務局で申請を行います。受け取りまでは15日程度です。
- パスポート
- 滞在証明書
- 申請書
- オンライン登録の結果の印刷物
申請の前に、以下のページでオンライン登録をする必要があります。
▼オンライン事前登録
https://lltptructuyen.moj.gov.vn/home?locale=en
その他書類
健康診断書
日本でもベトナムでも健康診断を受けることができます。
日本の場合は特に指定の病院はありません。
ベトナムの場合は指定の病院があるため事前に確認が必要です。ハノイであれば日本人スタッフのいるクリニックも対象に含まれています。
▼ファミリーメディカルプラクティス・ハノイhttps://www.vietnammedicalpractice.com/care24h/jp/contact-us/family-medical-practice-hanoi
ハノイのワークパーミット健康診断の指定病院での検査は以下の内容でした。
- 血液検査
- 尿検査
- 歯科検査
- 視力・眼球検査
- 耳、鼻、喉の内視鏡検査
- 皮膚やアレルギー、手術歴の問診
日本でワークパーミット用の健康診断する場合の検査内容はベトナムのと完全一致すれば良いのかというと、そうでもなさそうです。
筆者の場合、日本で受けたときは、通常の健康診断と同項目を実施し、歯科検診や内視鏡検査はやらず、逆に聴力検査を受けました。その時はそれでワークパーミットが取得できました。
業務経歴証明書
「専門家」の場合は、3年以上の実務経験(ベトナムでの仕事と同様の仕事)を証明する証明書を会社に準備してもらう必要があります。特に難しい内容ではなく、A4で1ページの分量です。
任命書
こちらも自社で用意してもらう必要があり、同じくA4で1ページくらいの分量です。
ベトナムへの赴任にあたっての辞令のようなものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
結構準備する資料も多く、申請から受け取りまでの時間もかかるため、全体の時間は余裕を持って確保しておいた方が安全ですね。
これからワークパーミットを取る際の全体イメージに役立てば幸いです。
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